🚀 要件定義が終わると、開発が終わっている
従来の開発では、要件定義→設計→実装→テストに数ヶ月かかるのが当たり前でした。
AI コーディングツール(Claude Code 等)を正しく活用すると、この常識が変わります。要件と設計をドキュメントに落とし込んだ時点で、 AI が実装の大部分を完了させる ことが現実になっています。
つまり「何を作るか」を明確にする作業 = 開発そのものになる。ステアリング駆動開発は、この「AI に何をどう伝えるか」を体系化した手法です。
🏗️ AI 駆動開発におけるステアリングの位置づけ
AI 駆動開発は、AI にコードを書かせるだけでは成立しません。以下の 3 層で成り立っています。

ステアリング駆動開発は最上位層 です。どんなに優秀な AI ツールでも、「何を作るか」が曖昧なら正しいコードは生まれません。逆に、ステアリングで要件と設計が明確になれば、AI は驚くほど正確にコードを生成します。
⚠️ バイブコーディングの限界
「AI に雰囲気で指示を出して、出てきたコードをそのまま使う」— いわゆるバイブコーディングには限界があります。
- コンテキストが揮発する(セッションをまたぐと忘れる)
- 品質が不安定(同じ指示でも結果がブレる)
- 大規模プロジェクトでスケールしない
小さな修正ならこれでも動きます。しかしプロジェクトが大きくなるほど、「何を作るか」の定義が曖昧なまま進めるリスクは大きくなります。
ステアリング駆動開発は、 作業の規模に応じてドキュメントの量を変える ことで、この問題を解決します。バグ修正に 8 ファイルの仕様書は不要ですが、新ドメイン追加には必要です。規模判定によって、過不足のない準備を行います。
🔄 ステアリング駆動開発の統一フロー
すべての作業は以下のフローに従います。
壁打ち → 規模判定 → オーナー承認 → ステアリング作成 → レビュー → 実装 → 完了
壁打ちフェーズ
実装前に背景・目的・スコープを整理します。 壁打ちのスキップは禁止 です。
- なぜこの作業が必要か?
- 何を達成したいか?成功の定義は?
- スコープ(含むもの / 含まないもの)
- リスク・懸念
壁打ちの結果は ADR(Architecture Decision Record)として永続ドキュメントに保存します。
規模判定(S / M / L)
| 規模 | 条件 | ステアリング | 作成ファイル数 |
|---|---|---|---|
| S | バグ修正、軽微な変更 | 不要 | 0 |
| M | 単機能追加、リファクタ | 必須 | 4 |
| L | 複数機能、アーキテクチャ変更、新規ドメイン | 必須 | 8 |
「全タスクにステアリングを適用する」罠を避けることが重要です。 S 規模にステアリングは不要です。
L 規模のシグナル
以下のいずれかに該当すれば L 規模:
- 複数の Bounded Context にまたがる
- 新しいエンティティ・集約を導入する
- 既存アーキテクチャの変更を伴う
- 新しい用語(ユビキタス言語)を導入する
📄 2 層のドキュメント設計
ステアリング駆動開発では、ドキュメントを 2 層に分離します。
永続ドキュメント(docs/)= 北極星
プロジェクトの方向性を定義するドキュメント。ステアリング完了後も残り続けます。
- アーキテクチャ設計書
- API 仕様
- ドメインモデル
- ADR(Architecture Decision Record)
ADR とは、「なぜその技術的判断をしたのか」を記録するドキュメントです。壁打ちフェーズの議論や設計判断を ADR として残すことで、後から「なぜこうなっているのか」を誰でも追跡できます。
作業ドキュメント(.steering/)= 今回の航路
タスクごとに作成し、完了後はアーカイブに移動します。
M 規模(4 ファイル):
| ファイル | 内容 |
|---|---|
| requirements.md | 詳細要求・受入テストシナリオ |
| design.md | コンポーネント設計・データフロー |
| tasklist.md | TDD 必須のタスクリスト |
| decision.md | 設計判断記録(ADR 形式) |
L 規模(8 ファイル):
上記 4 ファイルに加えて:
| ファイル | 内容 |
|---|---|
| architecture.md | 技術仕様書 |
| repository-structure.md | リポジトリ構造定義 |
| development-guidelines.md | 開発ガイドライン |
| glossary.md | ユビキタス言語の用語集 |
✅ 3 つの承認ゲート
ステアリング駆動開発では、 人間が 3 回承認する ことで品質を担保します。
1. 壁打ち後の規模判定承認
↓
2. ステアリング作成後のドキュメントレビュー承認
↓
3. 実装完了後の受入テスト承認
AI が自動で進めるのではなく、各段階でオーナーが判断します。これが「Humans on the Loop」です。
🗺️ 業界用語との対応
| 業界用語 | ステアリング駆動開発での対応 |
|---|---|
| SDD (Spec-Driven Dev) | .steering/ ワークフロー |
| Context Engineering | skills + path scoping + prepare-context |
| Harness Engineering | pre-push + サブエージェント + hooks |
| Humans on the Loop | 3 つの承認ゲート |
🔧 ステアリングのワークフロー
以下の図は、ステアリング駆動開発の全体フローを示しています。

📚 シリーズ記事
| # | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 概要 (本記事) | ステアリング駆動開発の全体像 |
| 2 | 壁打ち・規模判定編(公開予定) | 壁打ちの進め方、ADR の書き方、規模判定の基準 |
| 3 | ステアリング作成編(公開予定) | M/L 規模のドキュメント作成、TDD タスク分解 |
| 4 | 実装・完了編(公開予定) | TodoWrite 連携、進捗管理、アーカイブ運用 |
| 5 | コンテキスト設計編(公開予定) | AI に渡すコンテキストの最適化、skills 設計 |
| 6 | 品質ゲート編(公開予定) | doc-reviewer、テスト品質チェック、受入テスト |
| 7 | Claude Code ベストプラクティス(公開予定) | CLAUDE.md 設計、hooks、commands、rules、skills |
| 8 | Agent Teams 編(公開予定) | agents 定義、チーム構成、マルチエージェント協調 |